現在の状況:ユーザーが用具の定期点検を行っている際、ステンレススチール製アームにひびが認められる『アサップ ロック』を3つ確認しました。これら3つの『アサップ ロック』については、分析のためペツルへ返送されます。
現在までの対応
・ペツルに在庫されている『アサップ ロック』を点検しましたが、アームにひびは認められませんでした
・『アサップ ロック』の製造設備を検査しました。品質管理担当者が箱入れ前の『アサップ ロック』を1個ずつ点検しますが、これまでに同様の問題が認められたことはありませんでした
・この問題の原因を究明するため、ペツルは技術的な検証を開始しました
使用される上でのリスク評価
極めて厳しい条件下での試験:
・ひびのある状態をシミュレーションするため、両側のステンレススチール製アームのリベット箇所に切れ目を入れました
シミュレーションのために切れ目を入れた試験前の『アサップ ロック』
・ペツル製ロープ『パラレル 10.5mm』と『アサップソーバー』を用いて EN 12841 に基づく試験を行いました
・ペツル製ロープ『パラレル 10.5mm』を用いて静荷重による引張試験を行いました
動荷重試験の結果:
・墜落は停止し、おもりはシステムから離脱しませんでした
・『アサップソーバー』が伸長しました
・動荷重試験による切れ目部分の変形は認められませんでした
動荷重試験後の『アサップ ロック』
静荷重による引張試験の結果:
・7.2 kN でロープの外皮が断裂しました
・目視で広がりが確認できる切れ目がありましたが、該当箇所の破断やおもりの離脱はありませんでした
結論:
・取扱説明書に記載されている通り、『アサップ ロック』は『アサップソーバー』もしくは『アブソービカ』と併用する必要があります。これらのエネルギーアブソーバーは、衝撃荷重を 5kN に抑えます
・最悪のケースを想定した場合でも、アームにひびが認められる『アサップ ロック』を使用することによるユーザーへの更なる危険はありません
・ただし、アームにこのようなひびが認められる『アサップ ロック』は、直ちに廃棄する必要があります
ひびの原因究明
・今回行われた第一段階の検証は、ペツルが受領した写真およびEメールをもとに行われました。ひびの認められた3つの『アサップ ロック』がペツルに届き次第、更なる検証が行われる予定です
・3つの『アサップ ロック』に認められたひびが全てリベット付近に生じている点から、これらのひびは、リベットを止める際の製造パラメーターによりステンレススチールに潜在的な残留引張応力を生じたこと、また熱処理パラメーターによりパーツの材質が硬化し過ぎたことの2つが原因となり生じたとの作業仮説を立てました。この場合、ひびは常に微細な箇所から生じ、経過とともに目視でも確認できる状態へと進行します。ひびの進行が非常に緩やかであるため、製造上の最終的な品質検査で発見することができません
・この現象が現れるケースはごく少数と考えられます。ステンレススチール製アームにひびの認められた『アサップ ロック』の報告は、現時点でこれら3つのみです
ペツルの是正措置
現時点での予防措置として、『アサップ ロック』の製造工程に技術的な修正を加えます:
・ステンレススチール製パーツに潜在的な残留引張応力が生じないように、リベットを止める際の製造パラメーターを調整する
・ステンレススチール製パーツの硬化を抑えるために、熱処理パラメーターを調整する
現在使用中の『アサップ ロック』についての推奨事項
お手持ちの『アサップ ロック』を、ペツルの点検方法に従って定期的に点検してください。
・アームのひびによる差し迫ったリスクの増加はありません。ただし、全ての PPE と同様、このようなひびが認められる製品は直ちに廃棄する必要があります
・万が一『アサップ ロック』のアームにひびが認められる場合、使用を直ちに中止し、ペツルジャパン(株)までご連絡ください。保証による無償交換をさせていただきます
・『アサップ』 (B71 AAA) は本件の対象ではありません
今後の対応
・ひびの認められた製品が届き次第、上記仮説を検証するため、冶金学的な分析を行います。これらの『アサップ ロック』に対しては、動荷重試験も行います。これらの追加調査により、新たな是正措置を講じる可能性があります
・ペツルは引き続き本件の原因を調査し、可及的速やかに情報を発信していきます
皆さまの信頼が得られるよう、ペツルは引き続き高品質な用具を提供し、製品の改善に取り組んでいきます。本件に関してご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。この問題を迅速に解決すべく、全力を尽くしてまいります。
ペツルチーム