カラビナはゲートが閉じ、スリーブがロックし、荷重が縦軸にかかった状態で使用するようにデザインされています。それ以外の状態や方法で荷重がかかると危険です。
警告
- 以下の補足情報を読む前に取扱説明書をよく読んでください
- ここで紹介する技術を使用する前に、取扱説明書の内容を十分に理解する必要があります
- これらの技術を身に付けるためには、トレーニングが必要です
- これらの技術を自身で実践する前に、使用方法を熟知していて責任能力のある人に相談してください
荷重の方向
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例外的な状況を除き、カラビナは縦軸に荷重がかかるようにデザインされています。
ゲートが閉じ、スリーブがロックし、縦軸に荷重がかかる状態で使用した時にはじめて、バーティカルアクティビティで生じる荷重に耐えうる強度を発揮します。
縦軸以外の方向やセットが正しくない状態で荷重された場合、強度が低下します。
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主な危険
外れるリスク
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次のような場合、ゲートが開くことがあります:
– セット時にゲートが完全に閉じられていない (例: ノーズとゲートの間にスリングが挟まっている)
– ゲートが使用前に適切に閉じられていなかったり、ロックされたりした状態で、かつ岩、ロープ、ギアの一部等がゲートに干渉した場合 |
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– 岩、ロープ、ギアの一部等がゲートに擦れてスリーブのロックが解除され、かつゲートが開く方向に押された場合 |
カラビナ破断のリスク
注意: 適切なギアで1人のユーザーの墜落停止に用いられるような通常の使用において、カラビナが破断するほどの負荷がかかることはほとんどありません。しかしながら、不適切な状態でセットされたカラビナの破断強度に近い衝撃荷重が、墜落により生じる可能性はあります。
ロッキングカラビナ、ロック機能のないカラビナに共通のリスク
ロッキングスリーブに損傷を与えるリスク
フィールドにおいて危険が生じる例
1. ゲートの開放、ゲートが開いた状態での荷重
ゲートの開放
> おもりや人の墜落
ゲートが開いた状態での荷重
> カラビナが破断するリスク
カラビナのゲートが開いた状態での荷重による強度低下: 縦軸における強度のわずか 30 % (例: 『エーエムディ』の縦軸の強度が 27 kN なのに対し 7 kN)。
2. 横軸方向への荷重
カラビナの横軸方向への荷重による強度低下: 縦軸における強度のわずか 35 % (例: 『エーエムディ』の縦軸の強度が 27 kN なのに対し 8 kN)。
3. 多方向への荷重
多方向への荷重によってどの程度強度が低下するかは、荷重がかかる角度によります。
4. 角に当たった状態での荷重
カラビナが角に当たった状態での荷重による強度低下: 縦軸における強度のわずか 30 % (例: 『スピリット SL』の縦軸の強度が 23 kN なのに対し 6 kN)。
低下率は角の位置 (ゲートの中央位置やノーズの近く等) によって大きく異なります。
5. 過度な荷重がかかったカラビナ
カラビナの縦軸への荷重に対する強度は、主軸に最も近い位置に荷重がかかった場合に最大化されます。
荷重がゲート側に移った場合、強度は低下します。
強度の低下は、ゲートのノーズが主軸から離れた位置にある洋ナシ型カラビナで最も顕著です。洋ナシ型形状により、不適切な状態で荷重がかかることがあります。カラビナのゲート側への荷重による強度低下: 縦軸への荷重における強度のわずか 30 % (例: 『ウィリアム』の縦軸の強度が 27 kN なのに対し 7 kN)。
6. てこの力がかかる荷重
てこの力がかかる状態は無数にあるため、全てを網羅的に試験することはできません。
この状態におけるカラビナの強度は、縦軸における強度の 30 % 未満です。
強いてこの力がかかった場合、コネクターだけでなく、接続された器具や支点が損傷するおそれがあります。
7. スリーブに対する圧力 (スリーブ損傷のリスク)
ロッキングスリーブはカラビナにとって最も弱い箇所です。
ヨーロッパの規格では、スリーブに対する外からの圧力に対して 1 kN まで耐えうる強度が求められています (フィールドにおける使用では容易に生じる値です)。
ANSI Z359.12 規格における 16 kN 等、規格によってはより高い強度が求められます。
8. スリーブへの摩擦 (スリーブおよびゲートが開放するリスク)